『土がよくなりおいしく育つ不耕起栽培のすすめ』
以前に『はじめての自然農で野菜づくり』を読んで、ナンチャッテ畑は基本的に不耕起でやってるのだが、高山へ行った時に合宿所あるじと喋ってたら、「不耕起なんてとんでもない」と言われて反論できず、ちょっと勉強してみようと思って読んでみた本。
『土がよくなりおいしく育つ不耕起栽培のすすめ』
涌井義郎 著
家の光協会 刊
2015年1月 初版発行
誰が育てているわけでもない、自然の山で木々や下草がしっかりと育ち、空き地で草がぼうぼう育つのは、自然だから。ミミズや微生物などの土壌生物ときちんと共生関係ができると、植物は自分で育つ。農薬や化学肥料は、不自然な環境である「畑」で育てるから。
ということがよくわかったが、北日本や高原地帯など寒冷地には向いていない農法なのだそう。高山合宿所の畑はけっこう標高があるから、無理なんだろうな、と納得。
以下、極にゃみ的要約。
【耕す目的】
1.土を柔らかくする
→ミミズや土壌生物の働きを活発にすれば耕さなくてもある程度は柔らかくなる。しかし、作物は土がそんなに柔らかくなくても正常に育つ力を持っている。
2.肥料を混ぜ込む
→畑全体に混ぜ込む必要はない。
化成肥料を全面に施肥すると、作物の根が届かずすぐに利用できなかった窒素分が雨水に溶けて地下に流れ落ちたり、ガス化して大気中に逃げ出したりしてロスが多い。
有機肥料の場合は、作物への直接的な作用ではなく、土を肥やす材料なので、施肥と作物の生育には時間差があってよい。
3.雑草を退治する
→畑の雑草は有用資源で、夏場の作土の乾燥防止、有機物補給(緑肥)、天敵生物(益虫、有用菌など)の増殖と定着(棲み処、エサ、繁殖地)に役立つ。
一定程度に抑制するために草丈を低く管理する草刈、敷き藁などの有機物マルチを。
4.土壌の通気性・通水性をよくする
→ミミズや土壌生物、作物・雑草の根穴で達成できる。
5.有機物分解を促進して肥効を促す
→土を耕すことで有機物分解が進み過ぎることはむしろデメリット。
不耕起で土中の有機物を長く温存し、長期的に土を豊かにする方が重要。
【不耕起栽培を始める前に知っておきたいポイント】
・北海道、東北、高原地帯など冷涼な地域はあまり向いていない。
関東以西の平地であれば取り組みやすい。
・ある程度の地力が必要 →適した土づくりをまず行う
地力が低いと、何年たっても生育がよくならない。
3~5年くらい、積極的に堆肥や緑肥作物を鋤きこみ、地力が向上してから行う。
始めてからも数年間は敷き草や有機物マルチを意識的に行う
・苗を植えるときは植え穴に「弁当肥」を混ぜる
根に障害とならない完熟たい肥か、ボカシ肥を入れた上に植える
・雑草との付き合い方を転換する
根粒菌、菌根菌、エンドファイトや拮抗微生物の多くは、雑草の根とも共生したり、頼っている。
ただし、草丈が伸びすぎると作物の生育を抑制するので、適当な頻度で刈り倒し、作物の足元に有機物マルチとして敷く。
・有機物マルチは必須
耕さない畑の表土を裸にしないことが最も重要なポイントで、草の刈り株、刈り倒した草や落葉、作物の残渣などで土表を覆っておくことで、植物の根と土壌生物がはたらき、団粒化した良質の土が作られる。
・畑から持ち出す有機物は収穫物だけ
切株や下葉、剪定した枝なども持ち出さず、通路に置く。
・耕うんは最小にとどめる
弁当肥、溝施肥、穴施肥など掘り返すのは最小限に。
うね上に置くだけの「置き肥」が基本。
【不耕起栽培の作付計画】(家庭菜園の場合)
・生物多様性が重要なので、多品目栽培が基本。
※プロ農家の慣行農法による耕うん栽培で単一作物を作るのは効率のため。
(地力低下、連作障害、病害虫発生のリスクを化学肥料や農薬で解決)
・異なる科、根の浅い作物と深い作物を組み合わせる
浅根性:キャベツ、ニンジン、セロリ、レタス、玉ネギ、ホウレンソウ、スイートコーン
深根性:メロン、カボチャ、スイカ、トマト、インゲン、ナス、エンドウ、トウガラシ
・ユリ科植物を組み入れる
土中に、ウリ科のつる割れ病、ナス科の萎ちょう病などを引き起こす病原菌「フザリウム」がいるが、ネギやニラの根に共生する「シュードモナス」という細菌はアリシンという抗菌物質を出して、フザリウムによる病気を抑制する効果がある。
・緑肥作物を活用
マメ科植物は根粒菌の共生により、空気中のチッソを土壌に固定する作用がある。
また、マメ科は直根性のため土壌を深部まで耕し、表層の無機栄養素を有機物に変えて深層に移動させる役割もある
※マメ科の緑肥植物…クローバー、ヘアリーベッチ
うね間に播いて草生マルチとして使い、一定の草丈になったらカマなどで刈ってマルチに使う
・バンカープランツ(インセクタリープランツ=天敵温存植物)効果
野菜の隣にエンバクを植えておくと、麦の茎葉にクモやテントウムシが定着し、害虫を捕植してくれる
・バリヤープランツ
背の高い植物で壁を作ることで風を防いだり、害虫の侵入を防ぐ
ソルゴー、ライ麦、エンバク
茄子をソルゴーで囲むなど
・グランドカバープランツ
裸地になっていると、風雨による土壌侵食が進み、腐植が消耗するなど地力が落ちる。
有用微生物や小動物の生息環境を保全するために、クローバー、レンゲ、ヘアリーベッチなどで被覆しておく。雑草の抑制にも役立つ。
ムギ類、ベッチ類、カラシナなどは、ほかの植物の発芽を抑制する物質を土中に分泌(アレロパシー)。
ボカシ肥の作り方なども紹介されていて、やってみたいと思っている。せっかく米ぬかあるし。
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