『山岳気象予報士で恩返し』
先日の安全登山の集い@兵庫岳連で著者から直接入手した本。山岳気象の第一人者で、山岳気象専門会社「ヤマテン」代表の気象予報士。国立登山研修所専門調査委員兼講師も務める猪熊隆之氏がご自身の半生を振り返って書かれたもの。
山岳気象の専門家としての活躍の実際(竹内洋岳さんの8000m峰登頂、「世界の果てまでイッテQ!]登山部のサポートなど)、山と出会い、鍛えられながらも友人や後輩を喪い、自分自身も滑落事故によって重傷を負ったこと、その後遺症で幾度かの生死の危機をさまよったこと、そして“恩返し”として山岳気象情報を提供するようになるまでのいきさつなどが語られている。
また、全国で数百万人の患者がいるという「慢性骨髄炎」についても詳しく解説。
『山岳気象予報士で恩返し
「山の天気屋さん」の毎日は、ヒヤヒヤ・ドキドキ』
猪熊隆之 著
三五館 刊
2013年11月 初版発行
あとがきから、心打たれた部分を少し抜粋。
P224
気象の世界で働くことは、小さいころからの“夢”であった。気象会社を設立することは“夢”のまた“夢”であった。高校時代は一度、諦めた“夢”……。
お天気オタクだったこと、山岳部の扉を叩いて登山を始めたこと、ヒマラヤや冬期登攀に挑戦したこと、登山研修所での講師の経験、山岳専門旅行会社アルパインツアーで働いたこと、そこで多くの国、山に行かせてもらったこと、富士山での大怪我、肝炎で死にかけたこと、慢性骨髄炎の発症、メテオテック・ラボ社での経験、すべてに、そして一つひとつに意味があったのだ。どれ一つとして無駄ではなかった。
「どうして自分だけこんな思いをしなければならないのか」と苦しんだこともある。ただ、それを「苦しい」から「楽しい」に変える魔法の薬はあると思う。それは、「自分自身を変える」こと。
簡単そうで難しいけれど、それは山に登ることと一緒だ。
はじめから登ることを諦めてしまえば、景色は変わらない。でも一歩踏み出すことで、景色が変わってくる。もしかしたら、自分が見逃している景色、つまり“道”が見えてくるかもしれない。
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