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『「体の力」が登山を変える』

競技スポーツは、実のところ故障との戦いだが、一般的な登山活動はKarada_tikaraそこまで激しく体を酷使することはなく、健康増進のために取り組む運動としては好ましい。本格的な競技スポーツを高齢になっても続けている例はほとんどないが、登山は自分のペースさえ守れば一生涯継続的に取り組めて、健康長寿に貢献する。ただ、常に最大パワーを比較する競技スポーツと異なり、「どこまでがんばれるか」を自分で把握している登山者は少ない(それがわかるのは、頑張らざるを得ない状況に陥ったとき=遭難に類する状況)。 この本では、「体の実力」「頑張れる範囲」に当たりをつけ、さらに体の能力を鍛えていくための科学的方法を解説。病院で行われる検査を参考にした「チャレンジテスト」を紹介し、セルフチェックができる内容となっている。

『「体の力」が登山を変える』
齋藤繁 著
山と渓谷社 刊
2014年12月 初版発行

内容を一部紹介。

「はじめに ―登山で見つける体の余裕」 から

P10
(略)競技スポーツでは、常に最大パワーを比較するので、周囲も本人もこの「どこまで頑張れるか」を必然的に理解しますが、登山のような競技性の低い、あるいは競技頻度の少ないスポーツでは、あえて意識しないかぎり、この「どこまで頑張れるか」を把握できません。皮肉なことに、「どこまで頑張れるか」がわかるのは、頑張らざるを得なくなってしまった「道迷い」、「突然のケガ」の後など、危機的状況からの脱出シーンになってしまいがちです。では、そのような状況に追い込まれる前に「どこまで頑張れるか」について、おおよそ見当をつけることはできないのでしょうか。
(略)
 本書では、自分自身で「体の実力」「頑張れる範囲」に当たりをつけ、更に体の能力を鍛えていくための科学的方法を解説します。

「おわりに ―自然を楽しみながら体を丈夫に保つために」 から
P200
(略)同じ山でもルートや季節、当日の天候などで天と地ほど状況は変わります。また、登り方いかんでも体への影響は変わります。天候の急変などの環境要因で通常と大きく状況が変わってしまった場合、状況の急変に適切に対応できないと、大きな事故が発生するリスクが高まります。そして、事故でケガをした場合、街中ならばすぐに救急搬送され、大事に至らぬうちに治療を受けられる程度の傷害でも、生死に関わる甚大な被害に至ってしまうことが稀ではないのは、「登山」というスポーツの特徴です。ですから、「登山の実力」は、好天の環境で予想どおりのルートを踏破したという経験よりは、イザという時にどこまで耐えられるか、どんな環境までなら切り抜けられるかというところにあります。
(略)

 本書の最終原稿をチェックしている時に御嶽山の噴火が起こりました。お昼時に山頂にいた五十六人の方が亡くなり、少なくとも七人の方が懸命の捜索にも関わらず行方不明のままです (略)死亡原因のほとんどが損傷死と報告されており、猛スピードで飛来した巨大な噴石の直撃によるものと考えられます。本書では予想外の環境の変化にも対応できるような予備力を身につけて登山に取り組もうというお話をしましたが、火山噴火のような事態に対応できる予備力があり得るだろうかと考えるとむなしくなるばかりです。登山はある程度リスクがあるところを、リスク回避の能力を身につけてから挑戦し、その結果リスクを克服して目的地に到達した時に大きな達成感が得られます。しかし、生身の人間がどんなに努力しても大自然の巨大な力には抗しきれない場面があるということは、ポンペイの遺跡が遺跡となる前の時代から現在まで何ら変わりがないのかもしれません。

オマケ:左党向けの情報
第二部 臓器の働きとパワーアップ から
「生体の化学工場であり清掃工場 ―代謝系」
・アルコールの影響下では、バランスが悪くなるほか、感覚が鈍る。温度の感覚や痛みの感覚も鈍感になる上、アルコールには血管を拡張させる作用があるので、凍傷のリスクが高まる。
・アルコールの分解・排泄を速くするために運動をして汗をかくとか、サウナに入ることが有効と考える人がいるが、科学的根拠はない。運動によって血液循環が早まっても代謝の速度には変化がない。また、汗ではアルコールやアルデヒドはほとんど出ず、水分やミネラルが失われるだけなのでむしろアルコール代謝には不利。安静にして水分補給するほうがよい。
・アルコールの分解を早めて二日酔いを防止するサプリメントなどが市販されているが、科学的に効果が証明されているものはほとんど存在しない。(肝臓の分解能力を高めることができるようなものが本当にあれば、病院で治療に使っているはず)

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