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『医療幻想―「思い込み」が患者を殺す』

Iryo_genso_2世の中には、ほんとうにいろんな幻想が渦巻いていて、何が事実なのか幻想なのかわからなかったりすることが多いが、ことに病気や医療に関しては、「一般人にはわからない世界」という思い込みも多い。
高度な専門領域だというイメージがあるので、少しの体調不良でも「素人判断よりはちゃんとお医者さんに診てもらわないと」と思いがち。
だが(だからこそ?)、意外と「医療幻想」とも言うべきことは多い、ということが実例を挙げて述べられている。
意外なこと、衝撃的なこともたくさん。
読んでみてよかったと思う一冊。

『医療幻想―「思い込み」が患者を殺す』
久坂部 羊 著
筑摩書房 刊
2013年2月 初版発行

医療幻想とは、例えば…

・抗がん剤は延命効果のみ。がんの治療ではない
・点滴が有効なのは脱水症状だけで、それ以外はほぼ意味がない。血液を薄めるためむしろ有害
・コラーゲンなどサプリメントは効果なし
・高血圧の診断基準、「160mmHg以上」→「140mmHg以上に」変わった裏には製薬会社の存在?
・「早期発見・早期治療のためにがん検診は必要」と言われているが、結果的に死亡率は下がっておらず、有効性は不明

本来、「EBM(根拠にも基づいた医療)」であるべきなのだが、日本ではあまりその部分が重視されていないのが現状だそう。

一部抜粋
第3章「診断幻想」より
P63
 診断とは、ある種の線引きである。入間が基準値を決めて、正常と異常を分けている。だから基準値が変われば、それまで正常だった人が病気になったりする。
 その好例が高血圧だ。私が医師になった1981年当時は、収縮期血圧が160ミリHg以上、拡張期血圧が90以上が高血圧の診断基準だった。ところがこれが年々下方修正され、今や収縮期血圧は140以上が高血圧と判定されている。
健康診断に関して有効性検証がほとんど行われていない。



第4章「厚労省が増進する幻想」から
P85
 日本では、「がん検診を受けると、がんで死亡するリスクが30~60%減る」という研究があるが、そういうデータを出しているのは日本だけで、研究の客観性に疑問があるとされ、国際的な支持は得られていない。

第8章「病院へ行けば安心という幻想」から
P198
 ある講演会の質疑応答で、80代の女性にこんな質問を受けた。
「わたしは死ぬ前に人工呼吸器をつけられたり、点滴や管を入れられたりしたくないんです。そんなつらい延命治療を受けずにすむ方法があるでしょうか」
私は自信をもって答えた。
 「いい方法がありますよ。病院に行かなければいいんです」すると、会場から笑いが起こった。私は大まじめで答えたつもりだが、聴衆は冗談だと思ったようだ。それほど一般の人は病院に行くことを当たり前のように思っているのかと、改めて幻想の強さに愕然とした。


P211
 がんの治療には副作用がつきもので、治療で治る可能性より、苦しんで寿命を縮める危険性のほうが高いからだ。がんになってもすぐ死ぬわけではないので、70歳を過ぎたら治療に期待をかけて苦しむより、何もしないで残された時間を有意義に過ごすほうが賢明だというわけだ。こういう判断は、冷静なうちにしっかり心の準備をしておかなければ、下せないだろう。現実には、慌てふためいて治療にすがり、どんどん状況が悪くなって、人生のエンディングが最悪になる患者が圧倒的に多い。

本当に、いろんな幻想がまかり通っている。今度、天使系のアノお方が時間ができたら読んでもらってご意見を聞いてみたい。

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