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『グローバリズムが世界を滅ぼす』

2013年12月に京都で行われた「グローバル資本主義を超えて」というPhotoシンポジウムの内容に、後日の対談などを加えて構成された本。
自分が経済に関する本を読むようになろうとは、かつては思ってもみなかったが…

「グローバリズム」は素晴らしいことで、「規制緩和」や「自由貿易」が経済を活性化させる。そんなイメージが流布して久しいが、本当にそうなのだろうか。
そうやってヨノナカのシステムを変えてきた結果、格差は拡大しているし、経済発展は停滞したまま。いろいろな部分がほつれたり破たんしたり、ちっとも人々は豊かになったり幸せになったりしていないように感じる。

本書の結論はこうだ。
「グローバリズムは、経済危機・格差拡大をもたらし、やがて社会を崩壊へと導く」。
TPPにはずっと反対してきたけれど、それは「国内の農業がつぶされたらたいへんなことになる」という理由からだが、本書を読んでいろいろ腑に落ちた。農業だけの問題じゃない。非常に面白く、テンポよく読める一冊だった。

『グローバリズムが世界を滅ぼす』
エマニュエル・トッド 、ハジュン・チャン、柴山桂太 、中野剛志 、藤井聡、堀茂樹 著
文藝春秋 刊
2014年6月 初版発行

★京都・国際シンポジウム「グローバル資本主義を超えて」…ココ!

内容の一部を要約すると、
・株式会社の「短期利益の最大化とコストカット」が招くもの
「3か月で結果を出せ」と株主が迫るので、従業員を搾取し、サプライヤーからは値切る。リターンが目の前にない研究開発や従業員教育にコストをかけることができない。
すると、三年後かもしれないし、五年後、十年後かもしれないが、従業員は士気を失い、サプライヤーは質の悪い商品を納品するようになり、商品開発ができないので自社の商品も質が落ちる。すべてコストカットのせいで、会社は傾くが、株主はその株を売りぬいて別の新たな投資先へと移っていく。

・関税や保護政策の意味するもの
今の先進国は、自国の経済を発展させるために、未成熟産業を育成してきた。その方法が、関税や補助金、国営企業だったりしたわけだが、1980年代以降、IMFや世界銀行が貿易自由化を声高に叫び、補助金削減、民営化、産業の保護策の撤廃などを途上国にも押し付けたため、途上国が自国の産業を育てることが困難になってきている。
それって、すでに富を手にした者が、その富を占有するための… だよねぇ。

やはり、グローバリズム、新自由主義というものは、資本家のために都合のいい仕組みなのであって、けっして国民国家のためになるものではないことがはっきりわかった。

無責任な政治家が声高に叫ぶ、「成長戦略」なんて言葉に踊らされてはいけない。いい大人が成長してどうする。今後人口は減って当然だし、経済は縮小均衡でいい。まして「世界で戦える国」になんてならなくていい(比喩的にも、言葉の通りでも)。
それぞれの国が、それぞれの気候風土と、歴史や文化に支えられて、子々孫々のことまで考えながら国民と国土を守っていけばいい。国際交流はもちろんすればいいけれど、何も争うことはない。それぞれが自立的に存在し、差異を認め合って尊重しあえばいい。

平川克美さんの『「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ』、『小商いのすすめ~「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』、『グローバリズムという病』、『脱グローバル論 日本の未来のつくりかた 』、さらに『脱資本主義宣言 グローバル経済が蝕む暮らし』 、『脱グローバル論 日本の未来のつくりかた』、『食の終焉 グローバル経済がもたらしたもうひとつの危機』、そしてマネー資本主義ではない暮らし方を提案する『里山資本主義』などが示しているのは、きっとグローバリズムが破壊しつつあるものの、修復のための処方箋となるのではないかと思う。
そして、最近身の回りでは、「グローバル」じゃなくて、「ローカル」にこだわる人がとても増えてきている。

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