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ミントサロン【六甲山における六甲高山植物園の価値】

六甲山大学山麓キャンパス「ミントサロン」へ。
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前回は『摩耶山物語』と題し、摩耶山天上寺副貫主の伊藤浄真さんをお招きしたが、今回は「東アジア野生植物研究会」主宰の森 和男さん。
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お題は「六甲山における六甲高山植物園の価値」だが、六甲山の植物全般に関する興味深いご講演をいただいた。

森 和男さんは、西宮のご出身で、高校卒業後六甲山上の高山植物園に就職。ちょうど、大規模な土砂災害が起きた頃で、六甲ケーブルの土橋駅も埋まってしまった。高山植物園ではコマクサの群落が土砂に埋められ、それを掘り出す仕事をしたことが印象に残っているとか。
六甲山はよく知られているように、明治の終わり頃に植林が始まるまでははげ山だった。その後樹林が育って現在のような緑の山になったわけだが、植物相としてはあまりよい状態とは言えないそうだ。
薪炭林として利用され、伐採と育成のバランスが取れた二次林の状態が、じつは一番植物相が多様で、きれいな花もたくさん咲くのだとか。
ところが、樹林が茂りすぎて日当たりが悪くなると、林床に日が当たらないので、植物の多様性が失われていく。とくに、スギやヒノキの植林は、適正な間伐が行われていればともかく、現在の六甲山(主に北側斜面)では、過密なまま放置されている。単一植林は地滑りなどを起こす危険性があるので、注意が必要。

南紀大水害のとき、スギやヒノキの植林地が大規模崩壊を起こしたところがあるが、その後、一面にササユリが生えてきた例もある。
日当たりを好む草花、ササユリやイカリソウなどは裸地にもどるとすぐに戻ってくる。

神戸の街と六甲山は一体のもので、山の木々なども今手を打たないといろいろな問題が起きる。すでに景観的に、樹が茂りすぎて夜景が見えないところも多くなっていて、植物相も貧弱になってきている。まずは、道路わきの樹木を撤去するべきではないか。

かつて六甲山地にも多くの湿原があったが、樹林が茂ったためにそのほとんどが失われている。日本列島におけるサギスゲの西限とされていたイモリ池も、一度は提言して周囲の樹木を伐ってもらったが、その後放置されているので、もはや絶滅も近いかもしれない。
かつて、六甲山地にたくさん生えていた稀少な植物が、失われていっている。山火事でも起きれば、またリンドウやササユリ、キキョウなどが咲く山に戻るのかもしれないが、そうもいかない。

日本人は平安の昔から、山野に生える可憐な草花を愛でてきた。それを身近な庭などで大事に育てる文化があったが、明治以降に西洋文化が入って来て、園芸もすっかり西洋化してしまった。今では山野草を採取して育てようとすると、自然保護を訴える人びとから非難されてしまうようになった。そのような稀少な山野草を保全していく役割は、植物園が担っていかなければならない。

日本には高山植物をテーマにした植物園が3園ある(白山、白馬五竜、六甲山)。
温暖化の影響などで絶滅が危惧される植物の種を保存しようとする動きがあるが、100年保存したとして、100年後に栽培ができなくては意味がないので、栽培技術の継承をしていくことも重要で、そういう取り組みも進めている。

【六甲高山植物園のイベント】
★森和男氏による高山植物・山野草の栽培講座…ココ!(5月1日)
★特別企画「ヒマラヤの青いケシ~神秘の花の咲くところ~」…
  4月28日(木)~6月5日(日) ※期間中無休

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