『六甲山の植物―植物名と花のトレッキング』
古い書籍(『六甲山博物誌』)を紹介したついでに、もう1冊。24年も前に出版されたものだが、六甲山でよく見る植物の図鑑に、観察・学習の要素とコースガイドをプラスした構成。
掲載されている種は、フィールド調査(コドラート法)によるデータから出現率の高い種をリストアップし、観察体験からの考察によって偏りの生じないように選定したとか。カラーイラストと、解説には線画を添えてあるので、写真よりはるかにわかりやすい。(※但し…後述)
『六甲山の植物―植物名と花のトレッキング』
近藤 浩文,松下 まり子,武田 義明,小西 美恵子 共著
神戸新聞出版センター 刊
1992年10月 初版発行
※イラストに関して…
デフォルメなのか、印刷の再現性の問題なのかよくわからないけど…
不思議な色のものも。こんな色のシハイスミレとか、見たことないんですけど。
それはさておき、巻末の「六甲山系の変遷」というイラストも面白い。
原始林の時代(縄文~弥生):最終氷河期のあとの縄文海進期の原始林の状態。
山頂付近はブナ・ミズナラなどの温帯落葉広葉樹林、その下に針広混交林、中腹以下には照葉樹林。
二次林(中世)の時代:再度山には多々部城、山麓近くには滝山城、摩耶山には摩耶城が築かれ、自然林は壊滅状態。
はげ山(近世)の時代:南斜面は、山麓部にアカマツ林があるほかは、大龍寺、天上寺の周辺以外はほぼはげ山。北斜面はマツと各種樹林の混交林だった。
「はじめに」から少し抜粋 (近藤浩文氏)
六甲という山は、実に不思議な山だ。
私が初めて六甲に登ったのは昭和21年(1946)年の春のこと。
思えばそれ以来、今まで何十回、いや何百回登ったことだろう。しかし、六甲の自然には、そのたびごとに新しい発見と感動、未知への期待がある。たかだか東西30km、南北8km、そして最高峰の標高が931.3mという平凡な山塊にすぎないのに。
(略)
いま、植物相だけみても、山麓のシイ・カシの照葉樹林にはじまり、アラカシ・コナラの二次林、さらにブナ・イヌブナの落葉樹林へとつづき、草原、湿原、池沼、渓谷と多彩な自然環境が全山系の各所に展開し、花と緑が絶え間なく広がる。これが六甲の特色といえよう。
(引用ここまで)
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