「六甲山フォーラム」
第一部は「土砂災害の減災、森づくり活動」と題し、7組が話題提供。
口火を切ったのは、2014年8月に広島市安佐南区で土砂災害を体験された、救百合子氏。その夏は雨が多く、晴れた日が少なかったとか。長雨が続いたため、土砂崩れの危険性を告げる警告を聞いたこともあったが、まさか自分のところで起きるとは思ってもいなかったそう。
当日は、朝から雨が降り続いて、深夜になってもすごい雨音で眠れなかった。ふと窓の外を見たら、フラッシュのように光が点滅していた。雷かと思ったが、雷鳴は聞こえなかった。
午前3時過ぎ、さらに聞いたこともないような雨の音になった。地響きのような音が聞こえ、障子がびりびりと音を立てた。後で思うに、そのときに斜面が崩壊して土石流が起きたのではないか。窓を開けると、つんと鼻をつく腐ったような、かび臭いような土のにおいがした。
家の周りは濁流で、車やバイク、巨木なども流れてきていた。避難指示が出ていたが、とても動けるような状況ではなかった。
普通の雨の降り方ではないとは思っていたが、土石流が起きるとは想像もしていなかった。後になって、家の建て方、向きなどについても、土砂災害を意識して作らなければならないと思うようになった。「災害を想定した目で見ることが大切」との実感のこもったお話だった。
二番手は、神戸市立住吉中学校の生徒会の皆さん。東日本大震災の被災地、石巻に同名の住吉中学があって、生徒同士で交流の機会を持っているそう。現地での活動内容、そして生徒たちが考えた、災害時に中学生が何ができるか、についてお話しされた。
中学生には砂防ダムは建てられないけれど、被災者の誘導や、苦しんでいる人を元気づけることなど、できることはたくさんある。積極的にできることを探して実践したいというようなお話。また、熊本地震の被災地にも住吉中学という学校があるそうで、3校で交流していければとのこと。
続いて、地元の本山第一小学校区防災福祉コミュニティの壇之上正一氏から、防災福祉コミュニティの役割について。市内に192か所の同様の組織があるが、地域の災害弱者をサポートする役割を担っており、コチラでは主に中学生による高齢者の避難のサポートなどの訓練を実施している。
地域では、高齢化、転出などにより、災害経験者が減ってきており、4世代が参加する訓練も行っているが、過去の災害や経験を語り継いでいくことの重要性を感じているといったお話も。
国土交通省近畿地方整備局六甲砂防事務所から、石塚忠範所長が、土砂災害リスクについてと、砂防の仕事について。
かつて、昭和12年の阪神大水害、昭和42年の7月豪雨と、ほぼ同じくらいの規模の豪雨が降って被害が出ているが、昭和12年の被害を受けて砂防工事が進み、その効果によって、降雨量などの状況はほぼ同じくらいの規模だったにも関わらず、42年のときには、流出した土砂の量は1/2、被害は1/7に抑えることができた。
しかし、日本全体で、今までに経験したことのない豪雨が頻発している。砂防対策は基本的に過去のデータに照らして計画しているので、今のところ大きな被害は出ていないが、今後も大丈夫とは言い切れない。「土砂災害警戒情報」が平成20年から22年の間に、全国で3000回出された。一市町村単位でみると、2年に一度くらいの頻度だが、これが出されると1/5くらいの割合で災害が起きているので警戒が必要とのこと。
「市民主導による森づくりのいま」と題し、ほくら~ととや森の世話人倶楽部事務局長の高田誠一郎氏のお話。楽しくなくてはモチベーションも上がらないので、目標を設定し、「岡本桜回廊」づくりに取り組んでいる、という活動報告。
具体的な活動内容については、10月度の六甲山大学ミントサロン、「六甲山系グリーンベルト整備事業の森の世話人として森づくりを楽しく」で詳しく伺います。
そのあと、若い世代の活動紹介として、神戸大学大学院農学研究科の堀田佳那氏、甲南大学学生プロジェクト団体「Seed」の荒金日向子さん、菊池未紗さんのお話も。
第二部は座談会で、ひとはく中瀬勲館長を座長に、神戸市立住吉中学校教諭の朝倉禎尊氏、ほくら~ととや森の世話人倶楽部代表世話役の前田勝典氏、神戸大学大学院農学研究科教授の黒田慶子氏、甲南女子大学准教授の松村俊和氏も加わって、総勢11名で「語ろう!土砂災害の強い六甲山麓づくり」と題してセッション。
このパートでは、黒田教授のお話が印象的だった。
災害を経験した地では、災害の記憶を風化させないために、発生時から現在までの復興の履歴を見られるようにしておくことが重要。
土砂災害などでは、その後の植生の変化なども継続観察。それらを学校教育にどう取り入れていくかが問題。
実体験として生きる力を磨くことにつなげていく必要がある、というような内容。
また、「茂った森は素晴らしいのか?」という問いかけがあり、
・放置された人工林
・大木化した樹木
・近年拡大しているナラ枯れ
の問題を指摘。
薪炭林としての利用がされなくなり、森林が放置されたことが原因で、森は適正な管理をしていく必要があること、
かつては直径が10~15センチくらいになると伐採して利用していた。その程度の太さなら、1本が50~100㎏程度で、処理がさほど難しくなかったが、今放置された木々は直径40センチくらいまで成長しており、重量で1トンくらいある。
こうなると、素人が伐採することは不可能で、専門家の力を借りないと無理。公的なサポートが必須だそう。
黒田教授によるまとめ。
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