ヒガンバナの季節
黄金色の稲穂が垂れる秋の田に彩りを添える花で、瑞穂の国の原風景を形作る重要アイテムだけれど、じつはこれも元をただせば外来種。
原産地は中国で、古くに移入して定着しているので、昨今問題になる新参の侵略的外来種といっしょくたにしてはいけないのだが。
ちょっと変わった生活サイクルを持った植物で、夏場は休眠していて、涼風が立ち始める頃におもむろに目覚め、地中から花茎を伸ばす。
9月中旬から下旬にかけて一気に花を咲かせ、花が終わる10月頃に、今度は葉を伸ばす。もはや草刈りも行われなくなった田んぼの畦など、日当たりのいい場所で、冬中ゆったりと太陽を浴びて、栄養を蓄える。そして地中にせっせと球根を作って、田植えの準備で草刈りをする頃には、地上部が枯れて、休眠に入る。
冬眠ならぬ夏眠するという不思議な植物で、稲作のサイクルととても相性がいいのだ。
こんなに目立つ美しい花を咲かせる割に、三倍体なので種をつくることはなく、増えるのはもっぱら球根。日本で自生しているものは、すべて親系統が同一で、個体差がないため、全国でほぼ同時期に開花するのだとか。
ちなみに、“救荒作物”とされてきたが、有毒。全草にリコリン、ガラタミンなどのアルカロイドを含んでいる。
が、球根には10%程度のデンプンが含まれていて、丹念に毒抜きをすれば食料になるそう。いざというときには、そのめんどくさいプロセスをがんばって、非常食としていたらしい。毒があるため、モグラよけや害虫除けの意味もあって、田の畔や墓場の周囲に植えられてきたそうだ。
ところで、同じヒガンバナ科の植物で、明日あたり一気に開花しそうなのが…
「レインリリー」。高温と乾燥が続いた後、雨が降ると一斉に開花するのでこの名がある。一番よく見かけるのが白花の「タマスダレ」。早いものは6月くらいから咲いてるけれど。花は数日間で枯れるが、次々につぼみを上げてくるので、密植していると華やかだ。
近い仲間で、近所のコンクリート塀と舗装のすきまから勝手に生えてきて、刈られても刈られてもがんばって毎年花を咲かせてるのが「ゼフィランサス・シトリナ」。この種の特徴は、種をしっかりつけること。
開花から5日目に、もうこんなしっかりした種ができてた。
でも、ココはわずかな隙間以外は舗装されているので、いくら種を落としてもダメなんだなー。園芸種が逸脱した、まぁ外来種なわけだが、侵略的ではないので許容範囲ではないかと思って見守ってる。
ヒガンバナ科とは関係ないけど、色づいてきてきれいなのが…
ノブドウ。
ブドウ科ブドウ属のつる植物だけど、実は不味くて食べられないそう。生薬として使われてきたそうで、「蛇葡萄(じゃほとう)」「蛇葡萄根(じゃほとうこん)」などという名称もある。
| 固定リンク
コメント