『帰郷』
自衛隊員は経験しているが、戦争は実体験としては知らない。でも、戦争のときの話は年配者からたくさん聞いたという浅田次郎氏。
戦後70年を経て、実体験としての戦争を語れる人はどんどん少なくなってきている。
そしてこの国は、あの愚かな戦争を真摯に反省し、国際社会に向かって誓った“戦争放棄”という誠意を、放棄しようとしているように見える。
そんな中で、小説家としてできうる表現は何か。そんな思いで書かれたものなのではないだろうか。
「これは戦争小説ではなく反戦小説です」と述べておられる。
『終わらざる夏』に続く、戦争というものがごく平凡な市民の、小さな幸せや平和な暮らしを奪い去る、理不尽さを描いた作品。
6作の独立した短編を編んだものだが、浅田氏ならではの、せつないけれど味わい深く、いろいろと考えさせられる佳作揃い。お勧めです。
『帰郷』
浅田次郎 著
2016年6月 初版発行
集英社 刊
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