ミナトに来た樹と、森林植物園と。

おでかけのついでに、いろいろと取りざたされている“アノ樹”を見てきた。

神戸港開港150年記念イベントの一環で、メリケンパークに「世界一のクリスマスツリー」を設置するというもの。プラントハンター西畠清順氏（「そら植物園」主催）が、富山県氷見市の山中から掘り出し、はるばる輸送してきた生木が今日“植樹”された。

その樹は、樹齢約150年（推定）、全長30mのアスナロ。プロジェクトのテーマは「輝け、いのちの樹」。生きたまま運んで、氷見の山中とは全く環境の違うココに“植樹”するけど、「一瞬だけ輝いたいのちの樹」は、イベントが終わったらそのいのちを強制終了させられる。それだったら、「植樹」というより、「生け花」みたいな気がするのだが。

近くで見るとさすがに大きいのだが…　

あの広々とした空間で、ポートタワーや海洋博物館など大きな建造物がたくさんある中で見ると、さほど目立つものではない。海風に吹かれながら、長旅のせいなのか、なんだか疲れて（やつれて）いるように感じられた。

ライトアップできらきら輝かせるのは、ポートタワーや海洋博物館や観覧車だけじゃ足りませんか？鎮魂とか再生と復興のシンボルと言うなら、ルミナリエだけではダメですか？

まして、観光の目玉はたくさんあると思うのだけど…神戸市さん。

プラントハンター氏によれば、「震災の鎮魂、また復興・再生の象徴としてツリーを設置する」とのことだが、インタビューを読んでいる限りでは、“後付け”の理由にしか聞こえない。
「『木が可哀想』とか『人間のエゴでは？』と言う意見が出て議論になることが僕の願い」とも書いてあるが、炎上マーケティングの一種なのでは？と思うのは、下衆の勘繰りだろうか。気になる方は、ぜひ以下のリンクを読んでみてください。

参考サイト「キャリコネニュース」
★巨木を運ぶことは人間のエゴなのか――プラントハンターが「世界一のクリスマスツリー」輸送プロジェクトにかける想い…ココ！

イベントは、12月2日～26日。
ツリーをデコレーションし、夜はライトアップ。周囲でいろんなイベントをするとか。ちなみに、イベント終了後、この巨木は切り刻まれて“記念品”にされるそうだ。

自然の中で150年も生きてきた樹の命、あまりに粗末にしてませんか。
「人間は一生の間に20mの木を110本消費している」そうだが、生活のために使う材木と、同列に語っていいとも思えないのだけれど。

ライトアップもたぶん見に行く。けれど、それは楽しみのためではない。ここにこうして運ばれてきてしまった巨樹の、最期の姿を見ておきたいから。この巨樹の鎮魂のために。哀しい気持ちでしか見ることができないと思うけど。

その後、紅葉のライトアップを実施している神戸市立森林植物園へ。

今年は正門周辺とメタセコイヤ並木だけ、サンタさんもいなかった。

アジサイ坂は、一番上の部分だけ。

「森のライトアップ」は、11月30日まで。
期間中は定休日の水曜日も開園、平日は18:30まで、金・土・日は19:30まで。

★森林もみじ散策チラシ(PDF)…ココ！

「樹木のライトアップ」そのものに、問題はあると思う。
木の立場からすれば、迷惑なことだろう。
この地域に生育している木々は、夜は光合成をせずに休眠するのが自然で（白夜の地域は別）、市街地の街路樹などが光害によって弱ることもあると聞く。森林植物園のイベントだって同じことだが、日没後のわずかな時間だけなので、さほどダメージはないのではと思う。身びいきの勝手な言い分かもしれないが、この園の職員さんたちのお世話ぶりを見ていると、木々への愛と尊敬が感じられる。樹木の専門家である彼ら、樹に大きなダメージを与えるようなことはしないはず。
このイベントでは、夜の森の神秘的な暗さと荘厳さが（寒さも！）、しっかり味わえます（木々への畏敬の念がわいてきます）。

くだんの巨樹が、イベント後にこの園に植樹されて命をまっとうできたらまだいいのにな、とひそかに思っているけれど…。