『会社人間だった父と偽装請負だった僕』
オリンピック選手のプライバシーを巡るトラブルですっかり印象が悪くなってしまった感があるが、本書はいい本だと思う。一種のファザコンだとは思うけど。
「あとがき」から抜粋。
肉体労働の現場では貧困家庭に生まれた人が多かった。風俗業に至っては圧倒的に崩壊家庭出身者で占められていた。学歴では中卒ばかり。格差は世襲する。そんな考えは確信に変わった。
とはいうものの福祉政策で彼らを真っ先に救済すべきであるとは思わない。愛すべき彼らは自堕落で無責任で、何よりも目先の快楽を最優先する。それでいて結構たくましく、しぶとい輩が多かった。
エリート教育だって否定しない。社会の指導層には人格と知性を備える選ばれた人が就くべき。競争に勝ち抜いた人間にしかつとまらない。
問題は機会の不平等だ。
均質化した土壌から同質性に富むクラスばかりが社会上層を占める現状では、何よりも社会のダイナミズムが損なわれてしまう。
エリートと叩き上げが上手い具合にかみ合う社会こそ目指すべき方向なのだろう。
「エリートと叩き上げが上手い具合にかみ合う社会」こそが目指すべき方向、という点はまさにそうだと思う。
問題は、「格差は世襲する」という部分で、貧困や格差の連鎖を断ち切らないと、封建時代の身分制と実質的に同じことになってしまう。
そこをきちんとするのが福祉の仕事で、それを実効性のある制度として運用させるのが政治の役割のはずだ。
それなのに、なんだかおかしな方向にばかり動いて行っている今のこの国。どうしたものか。
なにはともあれ、モリカケの件をはっきりさせてもらいたい。
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