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『めざせ!槍ヶ岳 中年山ボーイ&山ガールGO』『隠居のレッスン』

MOTOKOTOさんのご縁で、著者の奥田氏から拝受した本。
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『めざせ!槍ヶ岳』は、六甲山が主な舞台になっていて、神戸新聞総合出版から発行されていることもあって、神戸新聞に書評を書かせていただくことになっていたのだけど、諸事情でその話は立ち消えたので、とりあえずこのサイトでご紹介を。

 結婚記念日の旅行で上高地を訪れたご夫婦が、宿泊していた帝国ホテルの窓から景色を眺めていたら、穂高の稜線を歩いている人を見つける。
「あんな所まで登って行けるんだ……」と驚いたのは、前日に明神池までの往復2時間で足が痛くなったからだろうか。ともあれ、その発見が、それまで何の縁もなかった“登山”への道を開くことになった。

 芦屋山手に邸宅を構え、日常の移動はほぼクルマ。歩く習慣などほとんどなかったというお二人が、槍ヶ岳登山を目指して一念発起。自宅のすぐ裏手に“山がある”ことに気づき、自宅から徒歩で行ける「ごろごろ岳」を皮切りに、六甲山に登り始める。

 ガイドブックやwebサイトで入念に下調べをし、計画的に経験を積み、2年がかりで槍ヶ岳登頂を成功させるまでの道のりを克明に描いた作品。
 本の帯にあるように、「山登りの指南書ではない」けれど、ビギナーさんにとってはいろいろと参考になることが多いと思う。多くの“指南書”は、ベテランが書いているがゆえに、間違ってはいないけれど、ビギナーにとって本当に知りたいことには触れられていなかったりすることもあるかも。一から始めた、それも独学で始めた方の視点には共感できるところが多いのではないだろうか。

 ロックガーデンから風吹岩、トエンティクロスから摩耶山、須磨アルプス、最高峰から有馬温泉… 初級レベルのコースから歩き始め、徐々に山慣れていくようすがわかる。山越えで有馬温泉に宿泊したり、山上のジンギスカンを目標にがんばったり。ストイックなだけの訓練ではなく、楽しみながらステップアップをされているのがいい。

 が……。
タイトルが“中年山ボーイ&山ガール”だし(今さら“山ガール”かよ、的な←年齢のことではなくて、流行語としてはすでに陳腐化して久しいという意味で。山業界では、すでに“山ガール”という言葉を揶揄的にしか使わなくなって久しい)。
著者はお医者様で、高級住宅地にお住まいのセレブリティだし。
 アッパークラスのエリート様が、なんとなく流行りに乗った系の、チャラい感じ?と、じつはやや生暖かくシニカルな目で読みはじめたのだけれど…

 前著『隠居のレッスン』を拝読してから、見方が変わった。

 こちらはサブタイトルが「ローコストで楽しむ暮らしのレシピ」。年金生活になったときを見据え、限られた資金でも生活クオリティを下げずに楽しむ処方箋、という体の一冊だ。
プロフィール欄に、「ミニマリスト&ダウンシフターとしてシンプルでスローな暮らしをエンジョイしている」とある。
 ざっくり一言でまとめると、「健康」と「美味しさ」を追求すると、結果的にローコストで無駄のない暮らしが手に入る、ということを、いろいろなデータを引きながら、理路整然と説いた本。たしかに隠居のレッスンとして申し分ない構成だが、クオリティofライフを向上させるために役立つ内容でもある(こちらはまさに“指南書”である)。

 人任せではなく自分で、頭を使い、体を動かし、いろんなもののアウトソーシングをやめることによって、結果的にヘルシーなスローライフに行きつくということに気づかれたわけで、そこは「さすが医学博士!」と感心したのだが、並みのお医者様ではそうはならない気がする(貧乏人の場合は、おカネがあまり使えないという制約から、同じところに着地することがある)。

 マクロビ、断食、自然栽培の野菜作り、手料理、ウォーキング… 
「贅沢」ではなく、「上質」なものを求めていくと、心身の健康と、豊かな楽しみにつながる。そしてそれは、結果的に環境負荷が少なく、サスティナブルなスタイルでもある。
それは、これからもっと注目されるべき考え方だと思うのだが、一面でストイックなイメージがつきまとう。
 だが、本書にはそのような堅苦しさは一切ない。おおらかな自然体で楽しみながら、という部分に好感を持つ人は多いのではないだろうか。
極にゃみ的には、住んでる世界が違いすぎる方だけれど、目指しているものは、もしかして案外近いのかもしれないなぁと感じている。

『めざせ!槍ヶ岳 中年山ボーイ&山ガールGO』
奥田裕章 著
神戸新聞総合出版センター 刊
2018年3月 初版発行

『隠居のレッスン』
奥田裕章 著
KKベストセラーズ 刊
2017年3月 初版発行

★著者のブログサイト『中年山ボーイ&山ガールGO』…ココ!

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