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『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』

乗客と運転士107人が死亡、562人が重軽傷を負ったJR福知山線脱線事故。
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その事故が起きたのは13年前の明日、4月25日。

先日隆祥館書店で行われた発刊記念イベントに参加し、その時に本書を購入したのだが、内容があまりにも重いので、サクサク読み飛ばすことはできず、丁寧に読んで、ようやく読了。魂のこもった渾身の一冊だと思う。ぜひ多くの方に読んでいただきたい名著。

著者の松本創氏は、元神戸新聞の記者。
極にゃみ的には、『月刊島民』主催“ナカノシマ大学”2月度「第1回ローカルメディアの大研究」のときに司会進行を務められたのを拝見して以来、注目していた。

『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』
松本 創 著
東洋経済新報社 発行
2018年4月6日 初版発行

13年前のあの日、朝からたまたま自転車で山本まででかけていて、JRの線路沿いを走りながら、「そういえば電車がちっとも来ないなぁ」と漠然と思っていた。

そして昼頃。
転勤で東京にいる知人からメール着信。「JRに乗ってへんやろな!?」

その日はたまたま両親が日帰り旅行に出かけていて、妹からも「あの人たち、JR使ってないやろね?」とメール。ほかにも安否確認をしてくれた方が数名。
阪急沿線に住んでいるので、日頃JRを利用することはほぼなかったのだが、「宝塚発の…」というニュースの言葉に反応してくれたみたい。

その頃には、頭上でずっとヘリの音がしていたように記憶している。阪神大震災以来、複数のヘリの音を聞くと不吉な感じしかしないのだが、あの日も、震災のときと同じく、最初の報道から死傷者の数はどんどん増えていった。全貌が見えないまま時間だけが過ぎ、そして最後の犠牲者が収容されたのは4日後のことだったそう。

宝塚駅発、同志社前駅行きの上り快速電車「5418M」は、伊丹駅を9:16:10頃発車、塚口駅を9:18:22頃通過し、事故現場となる半径304mのカーブに、制限速度70㎞/hを大幅に超過した116km/hで進入。9:18:54、1両目が左へ横転し、線路東側にあったマンションの壁に衝突。2両目も建物に衝突、3両目から5両目も脱線。最後部の7両目が停止したのは9:19:04。

なぜこんな恐ろしい事故が起きたのか。
「運転士のブレーキ遅れ」「日勤教育」「ATS-Pの未設置」が事故原因、と発表されたが、ではなぜ運転士はブレーキ遅れを引き起こしたのか。日勤教育の影響は?なぜATS-Pは設置されていなかったのか?

当時の経営責任者のその後の処遇、事故後に就任した社長らが書類送検されたり起訴されたりという動き、遺族への損害賠償、事故調査など、いろいろな側面からこの重大事故を丁寧に振り返っている。

たまたまあの列車に乗り合わせた、妻と実妹が亡くなり、娘が重傷を負うという目に遭った淺野弥三一氏が、“遺族の責務”というものを追求しながら、単なる責任追及ではなく、組織そのものの問題点に立ち向かっていく姿を克明に記録している。

鉄道事故に限らず、“ヒューマンエラー”という観点から、社会のインフラすべてに関わる、安全や事故防止にどう取り組むべきなのかを考えるために、非常に意義のある書籍だと思う。
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惨事の現場で立ち尽くす人々の姿が写真に残っている。一方、近くに工場を構える「日本スピンドル製造株式会社」は、自社の操業を停止し、社員230名を現場の救援に走らせた。

★文春オンライン『福知山線脱線事故から13年 ある2人の社長の「懊悩」と「決断」』…ココ!

少しだけ本書から引用しておく。
P285
 人はミスをする。ヒューマンエラーは、単に事故の「原因」ではなく、それ自体がさまざまな要因で引き起こされた「結果」である。それを前提に、ミスをした場合に被害を食い止めるハード整備と併せて、ミスを誘発する要因を事前に見つけ、最小限に抑える予防の仕組みが必要になる。これがリスクアセスメントの考え方であり、具体的には、報告文化を根付かせること、言い換えれば、ミスの隠蔽や虚偽報告が行われる企業風土を変えることが対策となる。

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