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『穂高小屋番レスキュー日記』

穂高岳山荘で長年小屋番を務めた宮田八郎さんの本…
Hotaka_koyaban遺稿集のような体裁になってしまったが、本来はご本人が書き上げるはずだったもの。昨年4月にシーカヤックで遭難され、生前に書き溜めた原稿をまとめた形で出版された。

『穂高小屋番レスキュー日記』
宮田八郎 著
山と渓谷社 刊
2019年3月 初版発行

穂高岳山荘の支配人を務め、山岳漫画『岳』に登場する小屋番「宮川三郎」の実在モデルとして知られているハチローさんこと宮田八郎さん。

極にゃみ的には、

2015年の「宮田八郎さんトークショー」でお話を伺って、「梅雨時の穂高がとてもステキなんですよ」という一言がずっと心に留まっていて、昨年6月にようやく梅雨時の穂高を訪れた。6月の穂高は初めてで、まぁ敗退したのだが。

極にゃみ的には、穂高がとても好き。たぶん冬のバリエーションデビューが正月の前穂北尾根で、夏山バリエーションのリーダーデビューも前穂北尾根じゃなかったっけ… なので、穂高のヌシのようなこの方にはとても注目していたのだけれど。

本書は、小屋番として山小屋で暮らした30年を振り返り、多くの遭難救助に関わった体験がつぶさに描かれている。自分へのいましめのために一部引用しておく。

P218

 経験を重ねることは必ずしも山の危険を減らすことにはなりません。むしろ山で次々と困難な場面に遭遇すれば、当たり前のことですがそのぶんリスクは増すのです。たとえば生涯にただの一度しかザイテングラートを歩かない人と、年に数十回はそこを歩くぼくのような者とでは、ザイテンで事故を起こす確率ははるかに後者の方が高いと言えます。ベテランであることは山での安全を担保することにはなりません。そこに山の落とし穴があります。

まさにその通りだと思う。私みたいなビビりでも、だからといって事故らないわけじゃない。ビビりながら滑落することだってあるかもしれない。あれほど多くの事故を目の当たりにし、あれほど多くの人の生死に立ち会ってきて、人の命のはかなさをよく知り尽くしていた人ですら、事故に遭うときは遭う。山にしろ海にしろ、不確実要素のあるアウトドアで遊ぶということはそういうことだ。

それでも…
「前書き」から。

 そのために穂高でぼくができること、ぼくにしかできないこと、そしてやらねばならないことはまだあります。

自分にできること。やらねばならないことをせねばならない。
「穂高を歩く人たちの安全に少しでもお役に立つのならとてもうれしいかぎりです。」と前文を締めくくったハチローさんの遺志を、ほんのわずかでも繋げていくことができますように。私は、私のフィールドで。

本書、もしもご近所書店で買えない方。熱帯雨林で買うくらいならぜひコチラで…
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