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『僕はイエローでホワイトでちょっとブルー』

ずっと気になってて、うちの別邸書庫で手配したけど当分順番が回ってこなさそうなので、書店で待ち合わせをしたときについ買ってしまった本。
Bywtbイギリスのブライトンという町で、イギリス人の配偶者と暮らしている著者の一人息子が、カトリック系の名門小学校から、“元底辺中学校”へ進学したことによって経験したいろいろなこと、が綴られている。イギリスは“思った以上の格差社会”で、人種差別や偏見によるトラブルも少なくないとか。そんな中で、ホワイトとイエローの血を引く息子くんが、ちょっとブルーになることとは… ポップで、ちょっとロックなタッチで描かれる息子くんの奮闘ぶりはとても面白かった。発売から約1か月で5刷36000部を売り上げたというベストセラーになったというのも頷ける面白い一冊。

『僕はイエローでホワイトでちょっとブルー』
ブレイディみかこ 著
新潮社 刊
2019年6月20日 初版一刷発行

格差が大きいイギリスでは、貧困層と富裕層は違う世界に住んでいるそうだ。人種差別はきついが、白人が上でカラードが下ということでもないらしい。(差別用語で)“チャヴ”と蔑まれている白人労働者階級もいるし、世界各地からの移民も多い。東洋人は「チンク」「チンキー」と馬鹿にされている。
なので、息子くんは、 本書のタイトルを
「でも、ほんとは『ぼくはチンキーでホワイトで、ちょっとブルー』のほうがよかったよね」 と述べたそうだ。

息子くんは、市の学校ランキングで常にトップを走っているようなカトリックの公立小学校に通っていた。緑に囲まれ、ピーターラビットでも出てきそうな上品な学校生活で、生徒会長を務めるような優等生。だが、自宅から近い中学校に通い始めると、そこはコワモテのお兄ちゃんや、ケバい化粧のお姉ちゃんがいて、いじめもレイシズムも喧嘩もあるスリリングな日常が展開していた。人種も格差もごちゃ混ぜ、英国社会のリアル縮図のような学校だったのだ。本書はそんな息子くんの1年半の記録である。

「荒れている地域」と呼ばれる元公営住宅地。かなりヤバい感じの層から、中流っぽい家庭までがまだらに分布しているごちゃまぜ地区で、息子くんの通う中学校にはいろいろな階層の子どもが集まっている。レイシスト発言を繰り返す同級生は、じつは移民の子で、下層に位置する人々がさらに下層と認識する人々を差別するということが起きたりもする。

息子くんが級友に「どんな夏休みだった?」と聞いたら「ずっとお腹が空いていた」。
満足に食事がとれない子どもを見かねて先生がこっそりランチ代を渡すこともあるそうだ。公営住宅地の中学校の先生たちは、週に10ポンドはそういうことにお金を使っているとか。緊縮政策で教育予算がどんどんカットされ、“底辺”に近い学校現場は悲惨なことになっている。

人種的に多様なだけではなく、一人親の家庭、ママが二人とか、パパが二人の家庭もある。そんな多様な家庭環境の子どもたちがぞろぞろいるなかで、チンキーでホワイトだからそうなのか、元々が聡明なのか、息子ちゃんの感覚はとても“ええ感じ”なのだ。読後感もとてもよい、買ってよかった。

P104 より抜粋
「もう授業やクラブ活動のためだけに学校予算を使える時代じゃない。貧困地区にある学校は、子どもたちの生活といういうか基本的な衣食住から面倒を見なければいけない」
(中略)
「緊縮が始まってからずっとそう。貧困地域にある学校は、どこも同じことをやっている。教員をやってる友人たちはみんな似たようなことを言っている。保守党の教育予算削減で私たちの賃金は凍結されているのに、こっちがポケットから出して使うお金は増える一方だねって愚痴りあってるんだけどね」
「滅茶苦茶な話ですね」
「昨日の夕食は食パン一枚だったって話してる子の言葉を聞いちゃたらどうする?朝から腹痛を訴えている子のお腹がぐうぐう鳴っていたらどうする? 昼食を買うお金がなくて、ランチタイムになったらひとりで校庭の隅に座ってる子の存在に気づいたらどうする?

格差がどんどん拡大している日本も、似たような状況になってきているのだけど…

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