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“表現の自由”は生きているか? ~『日没』

今日、東京で開催予定だった「表現の不自由展」が延期に追い込まれたという報道があった。
★「表現の不自由展」 東京の開催を延期 抗議相次ぎ…ココ!

2019年「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」については、河村たかし名古屋市長が「国民の心を踏みにじるもの」と述べて中止を要求、大村知事と真っ向から対立。菅官房長官(当時)は文化庁の補助金事業であることを楯とする発言。行政が表現に対して“検閲”とも言える介入をすることに対し、日本ペンクラブをはじめとする表現者たちがこぞって抗議するという騒ぎに発展した。

★まとめ:あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」
 展示中止にまつわるタイムライン…ココ!

Dsc03814 そんな状況を描いたのが、桐野夏生さんの本作。“「表現の不自由」の近未来を描く戦慄の最新作”と紹介されている。

小説というものをほぼ読まなくなって久しいのだが、このきな臭い状況の中で、久々に好きな作家さんの新作を読んだのだが…。
めちゃめちゃコワい。コワいから読みたくないんだけど、コワすぎて途中でやめられなかった。
桐野作品のヒロインは、突き抜けたカッコよさが魅力なんだけど、本作の主人公の女性作家は、なんとなく“イケてない”。桐野氏が「作家なんてこんなもんだよ」って自嘲的に創作した人物なのだろうか。

主人公はエンタメ作家の女性。「文化文芸倫理向上委員会」という政府組織からの召喚状が届き、よくわからないままに東京からは小旅行という感じの地方の駅へ向かう。迎えのクルマに乗せられ、連れて行かれたのは断崖に建つ古びた施設。安っぽい療養施設みたいな建物で、携帯は圏外、wifiも使えず、外部との連絡は一切できない。ほかの収容者との会話も禁止されており、まるで収容所のような雰囲気。そんな中で、「社会に適応した小説」を書け、と“更生”されられる…

『日没』
 桐野夏生 著
 岩波書店 刊
 2020年9月 初版発行

表現の自由とは。
公共とは。
権力と私権とは。

「自由」とか「権利」は、真剣に考えて、大切に取り扱わないと、紙一重で危ないことになる。
「空気」や「水」と同じで、なければ死んでしまうほど大切なのに、困ってないときにはまったく意識もされない。

国会で108回以上もウソをつき続け、数々の不正疑惑が山積みなのに断罪されない前首相とか、何を聞かれても壊れたテープレコーダーみたいな答弁しかしない現首相とか、“塀の中”にいるのが本当だろう真っ黒な政治家が大手を振って政界に存在し続け、その一方で不本意な不正を強要された官僚が自殺する… 
赤木さんの件は今少しずつ解明されつつあるけど、五輪関係者の自殺の件はすっかり報道されなくなったね。

どんどん“常識”が壊れていっているこの国。没落への道を粛々と辿りながら、ナニゲに不穏なこの国で生きていくには、そのあたりのことにはセンシティブでいなければならないと、私の中の臆病なカナリアが啼いている。作家は、フィクションの形で、警鐘を鳴らしている。

著者のコメント
「違和感を覚えながらも日常に流されているうちに、いつの間にか、世の中の方がすっかり変わってしまっている。この小説は、そんな怖い話です」


いつの間にか世の中の方が” …。

いま、現実がすでにそんな感じなんですが。
赤木さんが死を選ばざるを得なかったのはなぜですか。籠池夫妻が不当に長く拘留されたのはなぜですか。
公文書の改ざんなんかしてないし、国有地を不正取得なんてしてないひとには関係ないですか。
マルティン・ニーメラーのことばを思い出してしまうのは過剰な反応ですか。

★『日没』特設サイト…ココ!

【覚書】これまでに読んだ桐野作品
女神記』2009年4月
東京島』2008年11月
魂萌え!』2006年6月
『ファイアボールブルース』
『OUT!』

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