『アルピニスト』
寿命が縮みそうな恐ろしい映像、『アルピニスト』というドキュメンタリー作品。
「誰にも知られることなく、たった一人でクライマーの間で知られている登頂不可能とされていた山を次々と制覇している男がいる」という話を聞きつけた監督が、“その男”を探し出して会いに行くところからストーリーが始まる。
★『アルピニスト』公式サイト…ココ!
フリールートをソロ・ノーロープで登る映像はまぁ過去にもあったけど、未登のルートを、ということはオンサイトトライ。しかも、乾いた壁じゃなくて、極地の高山、ミックス壁。クランポン登攀で、素手とアイスアックスを使い分けて登る。ありえない… あの『フリー・ソロ』で世界を震撼させたオノルドが「クレイジー」と評してた。
スクランブリングしまくってるスカイハイのタクさんも「ヤバい!」を連発してたけど、ドライツーリングのシーンはホンマにヤバすぎて震えた。アルパインやってて脆壁を登ったことのあるヒトや、クランポン登攀をしたことがあるヒトなら、このとんでもなさがよくわかると思う。そして、当然のよーにリーシュレスなんだけど、粗忽モノ的にはそれだけでも怖すぎる。
※ハンノキ滝冬季単独登攀で知られる門田ギハードさんのコメントが興味深い。(→ココ)
名声などを一切求めていないマーク・アンドレ・ルクレールは、カメラを向けられることを好まない。撮影を了承してからも、黙って姿を消して一人で登ったりしていたが、撮影者であるピーター・モーティマーもクライマーであることから、次第に心を開いていったのか。映像がホントに素晴らしい。ドローンとかを駆使してると思うんだけど、ドキュメンタリーとは思えないレベルの仕上がり。
ルクレールは、子どもの頃、ADHD(注意欠陥障害)と診断され、学校にはあまりなじめなかった。やがて山に傾倒し、クライミングにのめり込むように。
クライマーの中でも、ずば抜けた人たちは、わりとそういう感じの人が多い印象。
ADHDは、“障害”と表現されているけど、注意欠陥、なんじゃなくて、ナニカに集中しすぎてしまう結果として、ときとして周囲への適応ができなくなるんだと思う。集中力がハンパなく、すごい能力を発揮する人が多い気がする。
社会に適応させようとその特性を押さえつけるのではなく、自由にさせて育てた母がすごいと思った。
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