『むこう岸』
ものすごくヤなストーリーを想像したけど、あにはからんや、とても希望の持てるストーリーだった。
子どもの貧困とかヤングケアラーの問題を正面から取り上げていて、格差社会と、格差のある“むこう岸”同士の分断について深く考えさせられる作品。
『むこう岸』
安田 夏菜 著
講談社 刊
2018年12月 初版発行
「生活保護受給者は働かずにお金がもらえてずるい」と思ってる人は、たぶんたくさんいて、そういうヒトたちはきっと、社会福祉の庇護を受けてるヒトのことを「社会のお荷物」と思ってる。
そして、不正受給のことを持ち出して批判するのだけど、世の中にはどうしようもないこともある。 …と、言うコトが書かれている。
自力でどうしようもなくなったときに、社会が支えてくれるのは悪いことじゃない。セーフティネットが存在することで、誰もが安心して生きていけるんだから。一時的に“お荷物”になったっていいんじゃないか。本書が訴えていることはそういうことだ。
極にゃみ的には、むこうでもない、こちらでもない、常にボーダーラインでおぼれそうになりながらなんとか漂ってる感じだから、セーフティーネットが機能しないヨノナカなんて恐ろしすぎて生きていけない。
“むこう岸”なんてカンケーねぇよ、な人が大半なんだろうけど、落とし穴はあちこちに開いてるし、どこでどうドはまりするかわからない。
生老病死は、“平等”に巡ってくるが、それをどう乗り切れるかはまったく不平等。病を得ても手厚い医療を受けられる人、治療費が出せなくて病院にすら行けない人…
生活保護に関しては、役所がそもそもなるべく受給させないようにしてたり、いろいろ問題がある。知ることは大事。
完全にどちらかの岸にいる人々は、対岸のことを思うだけの想像力がつかないのかもしれないけれど、そこを上手につないでくれるのがこういう小説はドラマだったりするのかもしれないなぁと思う。読んでみてよかった。
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