富士山は噴火するのか…?
ひとつ前のエントリで紹介した本は、富士山噴火の可能性に備えよという説。
対してコチラは、「富士山の噴火が近いってハナシには、そもそも証拠がない」という説。
『あしたの火山学 -地球のタイムスケールで考える-』
神沼克伊 著
青土社 刊
2021年10月 初版発行
『正しく恐れよ! 富士山大噴火』を記した藤井敏嗣氏は、日本の火山研究の第一人者で、火山噴火予知連会長、東京大地震研究所長(現名誉教授)、日本火山学会長などを歴任した「ミスター火山学」。
本書の著者、神沼克伊氏は、固体地球物理学が専門。東京大学地震研究所で地震や火山噴火予知の研究に携わってきた方。
本書はサブタイトルに「地球のタイムスケールで考える」とあるように、火山の活動を含むプレートテクトニクスは、生命体の寿命と比べて桁違いに長いスケールで考えなくてはならないということが書かれている。
「有史以来たびたび噴火を繰り返してきた富士山が、もう300年沈黙している」からそろそろ危険、という説に対して、
「富士山は、噴火活動をしていない期間が300年以上のことのほうが多い」とし、
「前の活動からまだたったの300年。いつ噴火するかはまったくわからない。その兆候は今のところない」というのが正しいと述べている。
富士山の噴火に関して、つぎのような段階を踏むだろうと書いてある。
1) 富士山直下の30㎞くらいの深さで地震が発生し始める
2) 地震は少しずつ頻度を増しながら、浅いところ(例えば深さ25km)でも起き始める
3) 震源がどんどん浅くなり、立ち上がりの波形が不明瞭な地震も起きるようになる
4) 山体内で地震が群発
そして、噴火に至る。
少なくとも過去300年、地下にマグマがなかった場所に、地中深くからマグマが貫入し、岩盤の中を上昇してくるには、それなりの時間がかかる。仮に一日1000m上昇するとして、地下30㎞で地震が発生し始めてから、約1か月はかかる。
それだけの時間があれば、住民の避難行動も充分余裕を持って対応できるだろう、という主張。
21世紀に入ってから、「前の噴火から300年が経過したから、次の噴火は近い」と警鐘を鳴らしたのは地質学が専門の研究者。
地球物理学の観点からは
「何も証拠がないので、富士山の噴火が近いとは言えない」そうである。
地震もそうだけど、噴火も予測が難しく、「噴火するかも…」と警鐘を鳴らしても、空振りに終わるかもしれない。
わかんないことをことさらに心配しても仕方がない。
「隕石に当たって死んだらどうしょう」と不安でしかたがない人はほぼいないだろうけど、噴火も頻度的にはそんなものらしい。
なので、一個人としては、噴火リスクのある山に登るなら、それなりの対処を行い、そうでないときは地震や台風などへの備えと同等程度に考える。
ただし、行政は違う。
巨大噴火が起きたら、起きてからの対処では間に合わない。防災の専門家だけではなく、いろんな分野の専門家から意見を聞いて、しかるべき対処をしておいてほしい。
いろんなところで目にする“有識者会議”が、ホントにジャストな有識者なのかどうか、私たちにはわかんないんだけど、的外れな人選をしてることもきっと多いんだろうなと思う。
傍から見てると似たような領域の“専門家”同士でも意見がいろいろ違うわけだから、誰のどの考え方が正しいのかなんて、誰にもわかんないのかもしれないけれど…
今、生きている我々の寿命がある間に、富士山が噴火するかどうかはわかんないけど、そうこう言ってる間にも、フィリピン海プレートと太平洋プレートは、たゆみなく北米プレートとユーラシアプレートの下にもぐりこみ続けていて、その動きでため込まれたひずみは時として地震を発生させ、火山フロントでマグマを発生させ続けてる。
地震も噴火も、いつかはわかんないけど、必ず起きる。備えられることは備えよう。(おい!政府!オメーだよ!)
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