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『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

ガザ地区での死者が4万人を超えた。パレスチナ人にとってはまさに地獄だが、現地で人々を虐殺しているイスラエル兵にも、PTSDを発症するケースが増えているという。それもまた地獄。
虐殺の模様をまるで楽しんでいるかのようにSNSに上げていた兵士が、負傷して前線から退いた。その後再びガザへ配属されることになって自殺したという記事を見た。
戦争は、どちら側をも傷つける。兵士だって人間なんだから、義のない戦いで罪もない人を殺せば、自分の心も徐々に死んでいくのは当然な気がする。
さて、本書。ベトナム戦争からの帰還兵で、PTSDに苦しんだ人が書いた。
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ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?
アレン・ネルソン 著
2003年7月 初版発行
講談社 刊

経済的な理由で兵士に志願する人は多い。日本でも、自衛隊に志願する動機に経済的な事情をかかえている人は少なくないと思う。
本書を書いたMr.ネルソンもそんな一人。

貧困家庭に生まれ、「おなか一杯食べられて給料がもらえる」と入隊した軍では、肉体的に極限状態に追い込む訓練を通して(“洗脳”のような手法で)、何も考えずに命令に従い、人を殺すことへの抵抗感をなくすように教育された。
「おまえたちは何者だ?」
「海兵隊員です!」
「声が小さい!おまえたちは何者だ?」
「海兵隊員です!」
「おまえたちのしたいことは何だ?」
「殺す!」
「聞こえんぞ!おまえたちのしたいことは何だ?」
「殺す!」
「聞こえん!」
「殺す!殺す!殺す!」

「ただの的」から「人型をした的」を狙って狙撃する訓練を繰り返し、「敵兵は人間ではない」と刷り込まれる。
初めて人を殺したとき、衝撃を受けながらも、手柄を上げたという誇らしささえ感じていたという。

一応の軍規はあるものの、「抵抗されて腹が立った」というような理由で村人全員を殺して村を焼き払ったり、略奪や強姦なども日常茶飯事。
“人間”が相手なら絶対にできないような残虐な行為が行われているのが、戦争の現場だったという。

ベトナム戦争帰還兵の多くがPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)を発症した。
1960年からの15年間で、米軍は兵士約260万人を投入、戦死者約5万8千人、負傷者約15万人。
生還した人の中で、アルコールや薬物に溺れたり、(それまではなかった)乱暴なふるまいをしたり、自殺する率が異常に高かったことから、原因を究明する中で「PTSD」という病名が発明されたのだとか。

ネルソンさんもそんな一人。
五体満足で生きて還ってはきたけれど、夜な夜な悪夢にうなされ、母は別人のようになってしまった息子を怖れ、妹たちからも拒絶された。実家で生活できなくなって、23歳でホームレスになってしまった。
そんなネルソンさんを見かけた高校の同級生が、自分が教師をしている学校で、子どもたちにベトナム戦争の話をしてほしいと持ち掛ける。
もちろん、彼女はホームレスになってしまったネルソンさんが立ち直るきっかけになればと思ったのだろうけど、悩み抜いた上で教壇に立ったネルソンさんの勇気はすごいと思う。
子どもたちは、最下層で生きてきて、今はホームレスの彼を「ミスターネルソン」と呼んで、真摯に話を聞いてくれた。

ジャングルでの恐ろしい体験、味方も敵も、たくさんの人が犠牲になった悲惨な戦場の話をしたけれど、自分が敵を殺傷した話には触れることができなかった。
話し終えたネルソンさんに、一人の女の子が質問する。それが本書の題名になっている。

ネルソンさんはその質問に答えることができなかった。
否定するとウソをつくことになる。肯定すると、自分は「ミスターネルソン」ではなく「残虐な殺人者」になってしまう。

できればそのまま立ち去りたい衝動の中、
「ほんとうの戦争のことを誰も教えてくれなかったからこそ、今の壊れかけた自分がいる。だから子どもたちは知る権利がある」と考え、逡巡の末、「Yes」と答えたネルソンさんに、子どもたちは…(ネタバレするので書かない)


この世の中は理不尽に満ちていて、私たちは罪なき人々が虐殺され続けていることを止められないでいるのだけど、子どもたちはやっぱり希望だなと思った。

ガザの子どもたちに、一日も早く平穏な日々が戻ってきますように。
イスラエルの罪なき兵士たちが、自分の心を殺すような蛮行から元の日常に戻れますように。

戦争なんて結局のところ、軍需産業に連なる巨大企業が煽っているのだし、どこの国でも、どの民族でも、どの宗教でも、一般市民にとっては起きてはならないこと。
いつも、どこの国でも、最も多くの不利益を被るのは貧しい人々、弱い立場の人々。“上級国民”は決して血を流さない。

我々は、国民が、絶対に戦争をしない、戦争に加担しないと固く決意した国に生まれたはず。
せっかく、第9条のある平和憲法の国に生きているのだから、この国が再び誤った道へ進むことがないように、きな臭い昨今だからこそ、監視の目をしっかり見開いておかないといけないと思う。

なんやねん、防衛装備移転三原則改定って!
米軍の兵器が足りないからってミサイル供与をするって。
間接的に日本の製品が人を殺すし、そのミサイルで攻撃された側は、日本もその戦争に加担していると思うのは当然。
戦争を放棄している国がやったらアカンこと!

いまこの国は、なし崩しに「戦争できる国」にしていこうとしているが、断固として戦争放棄を貫くべきだ。
政権与党は、裏金で汚れた手で、平和の砦たる憲法9条に手を出すな。

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