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『対決』

とあるきっかけ(思い出せない…)で読んでみようと思った一冊。
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『対決』
 月村了衛 著
 光文社 刊
 2024年4月24日 初版発行

この作家の作品は初めてなのだけど、読みながらなんとなく書き手は女性なんだろうなと感じてた。
名前に違和感はあったけど、敢えて女性っぽくないペンネームにしてるのかな、とまで思った。

未だに(!!)女性が置かれているいろいろたいへんな状況とか、それらに関連する気持ちとか、当事者だからこそ書けることだと感じたので。でも、男性だった…。

新聞記者である主人公と、“対決”する相手の大学の理事、そしてその周辺の女性たちの細やかな心理描写が、まさか異性の筆によるものだとは…

作家ってそういうものなのかもしれないけれど、ものすごい共感力というか、自分と違う属性を持つ存在の心の内面をここまで描写できることに驚いた。なんなら、ガワはオバサンでも中身はオッサンのワタシより、女性の心理を知っている?

2018年、文科省の汚職事件がきっかけとなって発覚した、医学部入試女性差別事件を下敷きにしている。
東京医大が、2013年から医学部医学科の入試で、一部の男性受験者に加点をしていたという驚くべき事件だ。

調べてみたら、ほかの大学でもほぼ同様のことが行われていて、関係者の間では暗黙の了解というか、「しかたのないこと」として認識されていたという。

なぜ「しかたがない」かと言うと、女子の方が成績がよくて、公平に扱うと男子の合格者が少なくなってしまうから。

「学力で優劣をつける」のが受験というもので、実際はどうであれ「試験の成績が良いヒトの方が優秀である」と判定するのが受験というシステムじゃないのか。

なぜ下駄を履かせてまで(頭脳的に劣ってる)男子を採りたいかと言うと、「女性は医師に適していない」という考え方が根強いからだという。

本書の中で、入試における女性差別事件をスクープすべく、内偵を続けるヒロインの新聞記者が、現場の医師にインタビューを行う。

インタビューに応じてくれた、検診センターで勤務する女性の眼科医師は、
「女子一律減点については、やむを得ないことだと思う」と答える。
「一番大きいのは、女性には出産、育児と言う避けられないオペレーション、ライフイベントがあり、どうしても職場を離れざるを得ないから。医師という仕事は、人命が懸かっているからこそ、途中での離脱が認められない。医療現場はそれくらい大変なので、産休や育休が予想される女性は採りたくないっていうのが本音なんです」と語る。

同様にインタビューに応じた病院勤務の男性外科医師は
「医療現場の実態は、不眠不休で体力的にも限界にある。現場が欲しいのは体力のある男子、戦力になる男。
新人の医師を一人前にするまでに、時間をかけていろいろ教えて、使えるようになったと思ったら、結婚、出産、育休で離脱されると、正直迷惑。怒りすら覚えることだって普通にある」。

…それは確かにそうなんだろうと思う。

個人クリニックの女性内科医師は
「近頃の女の子が、どうしてあんなに苦労してまで医学部に入りたがると思う?
それはね、医者と結婚したいからなの。それが日本に残された数少ない既得権益層に食い込む手っ取り早い手段だから」
 と、身も蓋もないことを言う。
「女の出産適齢期は短い。はっきり言うと20代限定。その間に相手を見つけなきゃならない。本来なら医師としてのスキルを身につけたり、研究に打ち込んだりすべき時期とまるっきり被ってるの。でも優先すべきは婚活。定時で帰れて、休みも取りやすい眼科や皮膚科、精神科とかに集中するわけ。しかも都市部での勤務一択で、医師不足の地方に行くなんて論外、そりゃ大学だって女子を敬遠したくもなるわ」

けれど、女子一律減点は容認されるべきと考えているのかと問えば、
「女子がどんな動機で受験しようが、そのことと差別とは別。
中には人の役に立ちたいから医者を目指している女子学生だっている。そんな子まで一律に排除するなんて、どう考えたらそんなひどい思想を擁護できるの?たとえ虚栄心から医学部を志望したとしても、それはその人の自由。地方に行きたがらない女性医師が多いなら、制度の方を変えるよう働きかけるべき。それをやらないで、女は採りたくないっていうのは上に立つ者が無能なだけ」と語る。

それ、ホントにそう。
結婚はともかく、出産・育児となるとどうしても女性の負担が大きく、そこを丸投げで押し付けておいて、「だから女は」と言われても。
そんな社会システムで、出生率が上がるわけがない。当たり前だろ。
社会の仕組みの方を変えるべきだ。北欧とか、そういう面での先進国に学べばいいだけ。かたくなにそれをしようとしないのは、“男”という既得権益を手放したくない男性が社会的地位を押さえているからだろう。

そして、どの分野でも必ずと言っていいほど、「ある」こと。
当たり前すぎて、それが問題であると認識すらされないほどに「ある」。

たとえばセクハラ、
たとえばアカハラ、
たとえばモラハラ、
そしてパワハラ。

もちろん男性だってハラスメントを受けている人はいくらでもいるだろうけれど、女性に対するものの方が圧倒的に多いし、当事者が「仕方ない」と思わされている現実はあると思う。
足を踏まれた人は当然痛いのに、それは仕方のないことと思わされているヨノナカ。
「痛いんですけど。踏まないでください」と言えば、
「そこに足を置いてる方が悪い」「避けない方が悪い」と言われるヨノナカ。

でも、少しずつ当事者が声を上げることによって、それは当たり前ではないということをヨノナカに認めさせていかなければいつまで経っても変わらない。

辛い被害に遭った人に、「#MeToo 」と声を上げ続く人々がいることで、少しずつヨノナカは変わっていくかもしれない。

そういう風に思える、そういう力のある作品だと思う。これを書いたモチベーションは、そういう理不尽がヨノナカにはびこっていることへの怒りなんだろうと思う。ここまで、女性が置かれている現実がわかっている男性がいることに救いを感じる。よい作品だった。

それにしても…レイピストの松本人志も、公党の代表でありながら不倫が発覚しても辞めない玉木雄一郎もひどすぎるんだけど、百田尚樹に至っては… だれがアレを公党の代表にした???

・女性は大学進学禁止
・25歳以上は結婚禁止
・30歳以上は子宮摘出

女性に教養や学歴を与えないようにして、社会進出の機会や賃金の平等を奪って、30歳までに産まなきゃ子宮摘出? 
女性を奴隷化して男性に依存しないと生きられないシステムを作れって?25歳以下の若い女にしか価値はなく、女性は「産む機械」でいろと?それってまるきりタリバンじゃねーか。

そんなのは「SF」じゃないんだよ。SFをバカにすんな。(SFファン、激おこ)

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